昭和32年に封切られた『黄色いカラス』と言う、当時かなり話題となった
映画がありました。
主人公は清という小学生ですが、戦地から復員した父が、
かつての部下に雇われ、屈辱的な日々を過ごすうち、
この清少年につらく
あたるようになります。或る日、図画の時間にカラスを黄色いクレヨンで
描きます。
父に対する屈折した心が、黒いカラスを黄色く塗ってしまいます。
映画の題名は、この一枚の絵から名付けられました。
清少年の意識の底には、優しかった父の姿が焼き付いていたに違いありません。
そして、もとの優しい父にもどって欲しいと、声なき声で叫んでいたことで
しょう。
幼くして父を亡くしたり、父と心ならずも引き離されたりすると、
父の愛情にすがる心が、
黄色と黒のふたつの色に執着するのです。
アメリカ映画『黄色いリボン』のヒロインの女性士官も、同じ兵営内の
中尉に
思いを寄せている間、黄色いリボンを三つ編みの髪に結んでいました。
いづれにしても、黄色は「愛情」に関連のある色です。
皆さんは『ラストエンペラー』と云う映画をご覧になりましたか。
あの映画によって、中国の皇帝の服色が黄色であることに気付かれた方は
大勢いることと思います。黄色は太陽をイメージする色であり、中国では
尊い色として、皇帝の服色になっています。勿論、皇帝以外の人は、
この色を着ることは出来ません。
一方、欧米の一部では、キリストを裏切ったユダが黄色い服を着ていたことから、
心の醜さを表す色として、受け止められているようです。
辞書でYELLOWを引いてみても、
[黄色人種/陰気な/嫉妬深い/疑い深い/扇情的な]など良い意味の訳が
ありません。
従って、黄色は極端な二面性を持った色だと云えましょう